なぜ、買手(取引先)は免税事業者の売手(自分)に値下げを要求してくるのか?要求してくる値下額は適正な額なのか?こんな疑問や不安を解消させ、ドーンと構えて冷静に判断するためには、「仕入税額控除の経過措置」を知っておくことがとても大事なポイントです。
まず、インボイス制度の導入によって、買手(取引先)が取引価格の引き下げを求めるメカニズムです。それはこんなストーリーで引き起こされます。
「免税事業者(自分)からの仕入は仕入税額控除ができなくなるので、消費税を代わりに負担しなければならない、だからその分の価格を下げて欲しい。」
この心情だけなら理解できる人も多いのではないでしょうか?今まで通りだと買手(取引先)は損をしちゃうから、その分を仕入の値下げで取り戻したい、というものです。だから、消費税10%分の値下げをお願いします、というセリフもわからなくはないと一瞬は思えるでしょう。
しかし、ここに「経過措置」というシステムが組み込まれています。
どんなシステムかと言うと、免税事業者からの仕入は仕入税額控除ができない、これ原則。
だけど、「経過措置」システムによって、いきなり全部が控除できないとはならない。
・2023年10月1日~2026年9月30日は免税事業者からの仕入について、仕入税額相当額の80%を認める
・2026年10月1日~2029年9月30日は免税事業者からの仕入について、仕入税額相当額の50%を認める
この「経過措置」と言われるシステムをしっかり理解しておきましょう。
2023年10月から3年間は、買手(取引先)は免税事業者からの仕入でも80%の仕入税額控除が認められるので、買手(取引先)が売手(自分)の代わりに負担する消費税の負担は消費税額の20%だけで済む、ということです。
買手(取引先)が売手(自分)から110万円(税込)で仕入れても、買手(取引先)が負担する消費税は、消費税額10万円から80%を控除した20%、すなわち2万円になります。
だったら、取引価格の引き下げは負担が増える2万円くらいが「合理的な範囲」じゃないですか?
これが言えると、買手(取引先)は。。。おっ、相手は良く知ってる。。。ヘタなことは言えないぞ(独占禁止法にひっかかるとやばいしなぁ、しかも独占禁止法の詳しいことはわからないしなぁ)。。。と思わせることができれば、公正取引委員会さんのお世話になるような事例は発生しなくなるのではないでしょうか。
それ以上に、買手(取引先)も売手(自分)も20%程度の負担の話だから、あんまり大騒ぎするような話ではないですかねぇ~、という平和が訪れるといいなぁ。
インボイス専門の登録代行、申告代行の税理士集団たんぽぽ(なんか長い)はそんな風に思ったりしています。